■目標
- 検査での「不良発生の確率」や「合格ロットの確率」を計算できる
- 分布ごとの使い分け(母集団有限か/確率小か)を理解する
- 1級につながる「モデル選択と近似」の感覚を身につける
【問題1】確率の基本
10個中3個が不良のロットから、2個を無作為に取ったとき、
両方とも不良である確率を求めなさい(母集団有限)。
解答・解説:
→ 超幾何分布を使う。
式:P={(不良から選ぶ組合せ)×(良品から選ぶ組合せ)}÷(全体の組合せ)
P=(3C2 × 7C0) ÷ 10C2
=(3 × 1) ÷ 45 = 0.0667(6.7%)
▶︎母集団が有限(戻さない抽出)→超幾何分布。
【問題2】二項分布の基本
不良率5%の製品から10個を独立に取ったとき、
不良が2個出る確率を求めよ。
解答・解説:
→ 二項分布(試行独立・確率一定)
P(X=2)=10C2 × (0.05)² × (0.95)⁸
=45 × 0.0025 × 0.6634 = 0.0746(7.46%)
▶︎母集団が大きく、確率が固定なら二項分布。
1級では「二項→正規近似」も扱う。
【問題3】不良が1個以下で合格とする場合
同条件で、不良0または1個のとき「合格」とする。
合格確率を求めよ。
解答・解説:
P(合格)=P(0)+P(1)
=10C0×0.95¹⁰+10C1×0.05×0.95⁹
=1×0.5987+10×0.05×0.6302
=0.5987+0.3151=0.9138(91.4%)
▶︎合格判定の確率=歩留まり率とほぼ同じ概念。
【問題4】ポアソン分布の適用条件
ある製品に微細な異物が混入する確率が1個あたり0.002。
1000個の中に混入が2個以下である確率を求めよ。
解答・解説:
pが小さくnが大きい → 二項分布を**ポアソン分布(λ=np)**で近似。
λ=1000×0.002=2
P(X≦2)=e⁻²×(2⁰/0!+2¹/1!+2²/2!)
=0.1353×(1+2+2)=0.1353×5=0.6765(67.7%)
▶︎λ(平均発生数)が安定すれば、nやpが変わっても近似精度が高い。
【問題5】不良率が低いときの近似確認
不良率p=0.01、n=100の場合、
「0個不良」が出る確率を二項とポアソンで比較せよ。
解答・解説:
二項:P=(0.99)¹⁰⁰=0.3660
ポアソン(λ=1):P=e⁻¹=0.3679
→ ほぼ同じ。
▶︎nが大、pが小ならポアソン近似可(np=定数)。
1級ではこの「近似条件」が出題される。
【問題6】抜取検査のリスク
不良率10%のロットから5個を抜き取り、
「不良0個なら合格」とする。
ロットが合格する確率を求めよ。
解答・解説:
P(0)=(1-0.1)⁵=0.9⁵=0.5905(59.1%)
▶︎これが消費者リスク(不良ロットを合格とする確率)。
メーカーと消費者のバランスを取るのが抜取検査の目的。
【問題7】製造ラインでの不良発生頻度(Poisson)
平均して1時間あたり2件の不良発生。
1時間に「3件以上」発生する確率を求めよ。
解答・解説:
λ=2
P(X≧3)=1-P(X≦2)
=1-e⁻²×(1+2+2)=1-0.1353×5=1-0.6765=0.3235(32.4%)
▶︎ポアソンは「単位時間・単位面積あたりの発生数」モデル。
(1級では「到着間隔」も扱う=指数分布)
【問題8】工程改善後の効果確認
改善前:平均不良λ=3
改善後:λ=1
各10回の試行で、不良が3個以下である確率を比較せよ。
解答・解説:
改善前:P(X≦3)=e⁻³×(1+3+4.5+4.5)=0.0498×13=0.647
改善後:P(X≦3)=e⁻¹×(1+1+0.5+0.167)=0.3679×2.667=0.982
→ 改善効果:0.647→0.982(大幅向上)
▶︎QCは「数値で効果を証明」することが大切。
【問題9】二項分布の平均と分散
n=20、p=0.05 のとき、
不良数Xの平均と標準偏差を求めよ。
解答・解説:
平均 μ=n×p=20×0.05=1.0
分散 σ²=n×p×(1-p)=20×0.05×0.95=0.95
標準偏差 σ=√0.95=0.975
▶︎二項分布の標準偏差=√(npq)。
→ Cpやσ管理ともつながる「ばらつきの尺度」。
【問題10】不良率を見積もるときの注意点(理論問題)
なぜ抜取検査では「正確な不良率」ではなく「推定的判断」をするのか?
解答・解説:
・全数検査はコスト・時間的に非現実的。
・抜取検査は統計的に「ロット品質を推定」する方法。
・合否判断は確率的に誤るリスクを含む(α=生産者リスク、β=消費者リスク)。
→ 検査方式を選ぶときは「許容リスク」を明示しておく必要がある。
■分布の使い分け(まとめ)
| 分布 | 条件 | 主な用途 | 代表式 |
|---|---|---|---|
| 二項分布 | n大きくてもp一定(独立) | 抜取・合否 | P(X=k)=nCk×pᵏ×(1-p)ⁿ⁻ᵏ |
| 超幾何分布 | 母集団有限・戻さない | 在庫検査・ロット内推定 | P=(不良Ck×良品Cn-k)/(全体Cn) |
| ポアソン分布 | n大・p小・λ=np一定 | 異常・欠陥数・事故発生 | P(X=k)=e⁻λ×λᵏ/k! |
💡 1級につながる考え方
- 「どの分布を使うか?」=モデル選択の論理
→ 二項→ポアソン→正規への近似関係を理解する - 抜取検査では「危険率(α, β)」の設計が問われる
- 工程能力や管理図との関係を意識する
→ 不良率=規格外確率=Z値から正規表で求める流れに発展