帰無仮説・対立仮説の基本定義
仮説検定とは、「データに差があるのか?」を数字で判断する方法です。
その出発点になるのが、「帰無仮説(H₀)」と「対立仮説(H₁)」です。
| 用語 | 読み方 | 意味 | 例(平均値の比較) |
|---|---|---|---|
| 帰無仮説(H₀) | きむかせつ | 差はない・変化はないと仮定する | 「新工程と旧工程の平均は同じ」 |
| 対立仮説(H₁) | たいりつかせつ | 差がある・変化があると主張する | 「新工程の平均は旧工程より大きい」 |
検定ではまず「差がない(H₀)」と仮定してスタートし、
データを分析した結果、**“その仮定を棄却できるかどうか”**を判断します。
つまり、帰無仮説は「比較の出発点」であり、悪者ではなく基準です。
よくある混乱ポイントとその理由
仮説検定を学ぶと、ほとんどの人が以下のように混乱します👇
「帰無仮説を“棄却できない”って、結局どっちが正しいの?」
「“差がある”と“有意差がある”の違いは?」
実は、この混乱の原因は「言葉のイメージ」と「確率の考え方」のギャップにあります。
💡 整理すると:
- “棄却できない”=「差がないと断言できる」ではなく、“差があるとは言えない”
- “有意差がある”=「偶然では説明できないほどの差がある」
つまり、「差がない証明」はできないのです。
あくまで「差があると言えるかどうか」を判断するのが仮説検定の目的です。
仮説検定の流れ(t検定・F検定)
QC検定で頻出する仮説検定には、t検定とF検定があります。
どちらも“データの差”を確認しますが、対象が異なります。
| 検定の種類 | 目的 | 主な使い方 |
|---|---|---|
| t検定 | 平均値の差を比較 | 「新旧製品の平均値に差があるか」 |
| F検定 | 分散の差を比較 | 「2つの工程のばらつきに差があるか」 |
🔹 検定の基本ステップ(共通)
1️⃣ 帰無仮説・対立仮説を立てる
例:H₀:μ₁=μ₂ / H₁:μ₁≠μ₂
2️⃣ 有意水準(α)を決める
→ 通常は5%(0.05)
3️⃣ 検定統計量(t値 or F値)を計算
→ 平均・分散・サンプル数から求める
4️⃣ 臨界値またはp値と比較
→ 判定基準:p値<α → H₀を棄却(差がある)
例題で考える棄却判断
例題:
「新製品の平均長さが既存製品と異なるかを検定せよ」
(n₁=10, n₂=10, α=5%)
計算の流れは以下の通り👇
1️⃣ 帰無仮説:μ₁=μ₂
2️⃣ 対立仮説:μ₁≠μ₂
3️⃣ t値を計算 t=xˉ1−xˉ2sp2(1n1+1n2)t = \frac{\bar{x}_1 - \bar{x}_2}{\sqrt{s_p^2\left(\frac{1}{n_1} + \frac{1}{n_2}\right)}}t=sp2(n11+n21)xˉ1−xˉ2
4️⃣ 自由度18、t分布表で臨界値 ≒ 2.10
5️⃣ t=2.85 → 棄却域に入る → H₀を棄却!
📊 結論:
新製品と既存製品には「統計的に有意な差がある」と判断。
つまり、“偶然では説明できない差”があるということです。
p値をどう読み解くか
p値とは、「帰無仮説が正しい場合に、観測された差が起こる確率」です。
QC検定では、このp値を見て“偶然かどうか”を判断します。
| p値 | 意味 | 判断 |
|---|---|---|
| 0.10 | 10%の確率で偶然起こりうる | 棄却できない |
| 0.05 | 5%の確率(境界ライン) | 迷うライン |
| 0.01 | 1%以下の確率でしか起こらない | 棄却(差がある) |
💡 覚え方:
p値が小さいほど「偶然ではない」
= 帰無仮説を“棄却する”根拠が強い
QC検定では、「p値と有意水準の関係」「p値の読み取り」でひっかけ問題が出やすいので注意です。
まとめ|仮説は「比較のための仮定」として考えよう
仮説検定は、単に数式を覚えるものではありません。
目的は、「差があるのかないのか」をデータで冷静に比較する思考法を身につけることです。
✅ まとめポイント
- 帰無仮説=比較の基準、対立仮説=主張したい内容
- 「棄却=差がある」「棄却できない=差があるとは言えない」
- p値は“偶然の確率”を数字で表す指標
QC検定では、仮説検定を理解すると統計の全体像が見えます。
「仮説は正しいと決めるためのものではなく、比較のための仮定である」——この考え方を意識して学ぶと、実務にもつながる深い理解が得られます📊✨