QC検定 計算問題

📊 第6問(レベルアップ):分散分析(ANOVA)


■目標

  • 複数のグループ(処理・条件)の平均に差があるかを検定できる
  • 平方和・自由度・分散比(F値)の意味を理解する
  • 「群内」と「群間」のばらつきの構造を説明できる

【問題1】分散分析の目的

分散分析(ANOVA)の目的を簡潔に述べなさい。

解答・解説:
複数のグループ(例:条件A,B,C)の平均に有意な差があるかを、ばらつきの比較で判断する。
→ 「平均の差の検定(t検定)」を3群以上に拡張した手法。

▶︎分散を“分けて比べる”=Analysis of Variance(分散の分析)。


【問題2】基本構造(群間・群内)

A, B, Cの3条件でデータを取ったところ、
各条件でばらつき(群内分散)は似ている。
このとき、全体平均からのズレが大きければ何が言えるか?

解答・解説:
群平均が全体平均から離れている → 群間分散が大きい。
群内分散が小さい → 条件間に差がある可能性が高い。
群間分散 ÷ 群内分散 が大きいほど“平均に差あり”と判断。


【問題3】平方和の定義(SS)

分散分析で使われる「平方和(Sum of Squares)」3種類を挙げ、その意味を述べよ。

解答・解説:

  1. 全体平方和(SST)=全データの総ばらつき
  2. 群間平方和(SSA)=各群の平均が全体平均からどれだけ離れているか
  3. 群内平方和(SSE)=各群内での個々のばらつき

関係式:
SST = SSA + SSE

▶︎分散分析では「全体のばらつきを、原因(群間)と誤差(群内)に分ける」。


【問題4】実データ例(計算ステップ)

3条件A,B,Cにおける測定結果が以下のとき、
群平均・全体平均を求めよ。

条件データ平均
A4, 5, 6
B7, 8, 9
C6, 6, 6

解答・解説:
A平均=(4+5+6)/3=5
B平均=(7+8+9)/3=8
C平均=(6+6+6)/3=6
全体平均=(4+5+6+7+8+9+6+6+6)/9=6.33

▶︎まず「群平均→全体平均」を出すのがスタート。


【問題5】平方和の計算例

前問の結果を使い、SSA(群間平方和)を求めよ。

解答・解説:
各群平均と全体平均の差の2乗×群の大きさ。

SSA=3×(5-6.33)²+3×(8-6.33)²+3×(6-6.33)²
=3×(1.77)+3×(2.78)+3×(0.11)
=3×4.66=13.98

▶︎群間平方和は「平均値の差」が大きいほど増える。


【問題6】群内平方和の計算

同じデータで、各群内の平方和SSEを求めよ。

解答・解説:
A:(4-5)²+(5-5)²+(6-5)²=2
B:(7-8)²+(8-8)²+(9-8)²=2
C:(6-6)²×3=0
合計SSE=2+2+0=4


【問題7】分散比(F値)の計算

SSA=13.98、SSE=4
群数k=3、総データn=9
分散比F=(MSA)/(MSE)を求めよ。

解答・解説:
自由度:
群間=k-1=2
群内=n-k=6

MSA=SSA/2=6.99
MSE=SSE/6=0.667
F=6.99 ÷ 0.667=10.48

▶︎F値が大きいほど「平均に有意差がある」可能性。


【問題8】有意差の判断(F分布表)

問題7のF=10.48、自由度(2,6)のとき、
有意水準5%のF₀.₀₅(2,6)=5.14とする。
このとき平均に差はあるか?

解答・解説:
F=10.48 > 5.14 → 棄却域に入る
よって「平均に差がある」と判断(有意差あり)。

▶︎分散比が大きければ「群間のばらつき > 群内のばらつき」。


【問題9】分散分析の前提条件

ANOVAを使うときの前提条件を3つ挙げよ。

解答・解説:

  1. 各群のデータは独立である
  2. 各群の母分散が等しい(等分散性)
  3. 各群が正規分布に従う

▶︎2級では丸暗記でOK。1級では**分散の検定(F検定)**で確認。


【問題10】1級につながる考察:要因効果の解釈

ある3種類の加工方法で得られた寸法データに差があることが分かった。
この結果をどう実務に活かすべきか?

解答・解説:
・統計的に差がある=「方法による影響が存在する」
・ただし「どの組が違うか」はANOVAだけでは分からない。
 → **多重比較(Tukey法・Bonferroni法)**が必要。
・差があったら「現場条件・作業要因・材料差」を再検証する。

▶︎QCは“統計で差を見つける”だけでなく、“改善へつなげる”ことが目的。


■計算まとめ表

名称計算式意味
群間平方和 SSAΣnᵢ(ȳᵢ-ȳ)²グループ間の差
群内平方和 SSEΣΣ(yᵢⱼ-ȳᵢ)²グループ内の誤差
全体平方和 SSTSSA+SSE全体のばらつき
群間分散 MSASSA / (k-1)要因の分散
群内分散 MSESSE / (n-k)誤差分散
分散比 FMSA / MSE平均に差があるか

💡1級につながる視点

  • 分散分析は「ばらつきの分解」。
    → SST=SSA+SSE の式は、QC七つ道具の背後の統計構造。
  • 1級では「F分布の性質」「自由度」「帰無仮説(平均に差なし)」の定義まで踏み込む。
  • さらに発展すると「二元配置ANOVA」「交互作用」「共分散分析(ANCOVA)」へ。

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