QC検定 計算問題

📊 第3問(レベルアップ):管理図の計算(UCL・LCL・A₂係数)


■目標

  • 管理図の仕組みと目的を理解する。
  • X̄–R管理図で**管理限界線(UCL, LCL)**を計算できる。
  • 異常検出の判断基準を理解し、**「管理状態」≠「規格適合」**を区別できるようにする。

【問題1】管理図の目的

管理図の主な目的を簡潔に説明しなさい。

解答・解説:
工程のデータを時系列で監視し、異常の兆候を早期に発見すること。
ばらつきを「偶然原因」と「特別原因」に分けて判断する。

▶︎平均が安定していても、特定時点で外れ値が出れば「特別原因あり」。


【問題2】X̄–R管理図の基本式

X̄–R管理図のUCL(上限)・LCL(下限)の一般式を書きなさい。

解答・解説:
平均値(X̄)の管理限界線
UCL=全体平均 + A₂ × 平均範囲(R̄)
LCL=全体平均 - A₂ × 平均範囲(R̄)

範囲(R)の管理限界線
UCL=D₄ × 平均範囲(R̄)
LCL=D₃ × 平均範囲(R̄)

▶︎A₂, D₃, D₄ は「サンプルサイズn」によって変わる係数。


【問題3】係数A₂を使った管理限界線(基本計算)

n=5のとき、A₂=0.577
全体平均=20.0
平均範囲R̄=0.4
X̄管理図のUCLとLCLを求めなさい。

解答・解説:
UCL=20.0+0.577×0.4=20.23
LCL=20.0-0.577×0.4=19.77

▶︎中心線は「20.0」。
UCL・LCLを超えた点が出れば「工程異常」の疑いあり。


【問題4】R管理図の限界線

n=5のとき、D₃=0、D₄=2.115
平均範囲R̄=0.4
R管理図のUCLとLCLを求めなさい。

解答・解説:
UCL=D₄×R̄=2.115×0.4=0.85
LCL=D₃×R̄=0×0.4=0

▶︎範囲が0.85を超えると、ばらつきが異常に大きい。
0に近い場合は、測定誤差や異常な安定化(異常な測定)を疑う。


【問題5】平均値が変動したときの影響

平均値が20.0から20.3へ上昇した。
X̄管理図のUCL=20.23、LCL=19.77のとき、この変化をどう判断するか?

解答・解説:
20.3はUCL=20.23を超えていない。
→ 管理状態内だが、上昇傾向が続けば特別原因の可能性あり

▶︎管理図は「1点だけで判断せず、傾向を見る」ことが重要。


【問題6】連続点の異常(傾向の検出)

管理図上で、連続して7点以上が中心線の同じ側に現れた。
どう判断するか?

解答・解説:
偶然では起こりにくく、特別原因による偏りの可能性が高い。
→ 工程条件の変化、測定機器のずれ、作業者変更などを調査する。

▶︎QC2級・1級ともに出る「異常判定ルール(連続点法則)」の一つ。


【問題7】サンプルサイズが大きい場合のA₂

nが大きくなるとA₂はどう変化するか?理由も述べよ。

解答・解説:
nが大きいほどA₂は小さくなる
理由:平均値のばらつきはサンプルを多く取るほど安定する(σ/√n)。
→ 限界線の幅も狭くなる。

▶︎A₂の数値は統計表で与えられる(例:n=2で1.880、n=10で0.308)。


【問題8】管理状態と規格適合の違い

「管理状態」と「規格内」の違いを説明せよ。

解答・解説:
・管理状態:工程が安定し、偶然原因だけでばらついている状態。
・規格内:製品が規格範囲(LSL~USL)に収まっている状態。

▶︎管理図は「工程の安定」を見る道具。
→ 規格外品が出なくても、工程が不安定なら要改善。


【問題9】データ例から管理限界を求める

n=4、A₂=0.729、D₃=0、D₄=2.282
X̄の全体平均=50.0
R̄=0.5
UCLとLCLを求めよ。

解答・解説:
X̄管理図:
UCL=50.0+0.729×0.5=50.36
LCL=50.0-0.729×0.5=49.64

R管理図:
UCL=2.282×0.5=1.14
LCL=0×0.5=0

▶︎これが基準となる監視ライン。
製造ラインでは、この値をもとに日々の測定値を管理図にプロットする。


【問題10】工程能力と管理図の関係

Cp=1.33 の工程でも、管理図で点がLCLを下回った。
どう解釈するか?

解答・解説:
Cpは「ばらつき能力」、
管理図は「工程が安定かどうか」を見る指標。

Cpが良くても、**一時的な異常(特別原因)**が発生すれば管理外になる。

▶︎品質は「能力が高い」+「安定している」=両方が必要。
→ これが1級でも頻出の「管理状態」の概念。


■この章のまとめ

区分計算式・意味備考
X̄管理図UCL=X̄̄+A₂×R̄/LCL=X̄̄-A₂×R̄平均のばらつきを監視
R管理図UCL=D₄×R̄/LCL=D₃×R̄ばらつきの安定性を監視
管理状態偶然原因のみで変動している状態改善不要
管理外れ特別原因が存在する可能性改善・調査が必要

💡1級につながるポイント

  • 管理図の「統計的根拠」=正規分布と中心極限定理。
  • 管理限界は「平均±3σ/√n」で理論的に導ける。
  • 1級では「管理限界の推定誤差」や「群間・群内分散」も問われる。

-QC検定, 計算問題
-