QC検定 計算問題

📉 第7問(レベルアップ):回帰直線による予測と決定係数(R²)


■目標

  • 回帰直線の式から、未知の値を正しく予測できる
  • 決定係数R²を解釈し、「モデルの説明力」を理解する
  • 1級に向けて、予測誤差・外挿・信頼区間などの視点を身につける

【問題1】回帰式から値を予測

ある工程で、回帰式が
y=2.5+1.2x
と求められている。x=5のときのyを予測せよ。

解答・解説:
y=2.5+1.2×5=2.5+6=8.5

▶︎回帰式は「xが1増えると、yがどれだけ増えるか」を示す。
ここではxが1上昇→yが1.2増加


【問題2】決定係数(R²)の意味

相関係数r=0.9のとき、決定係数R²を求め、その意味を述べよ。

解答・解説:
R²=r²=0.9²=0.81(81%)

→ yの変動のうち、81%がxの変化で説明できる
残り19%はその他の要因や誤差。

▶︎R²は“どれだけ当てはまっているか”の指標(0~1)。


【問題3】低いR²の解釈

R²=0.35のとき、どんなことが考えられるか?

解答・解説:
xとyの関係が弱い、または他の要因が強く影響している。
単一の要因では説明しきれない
1級では「多変量回帰」で複数要因を組み合わせる発想につながる。


【問題4】回帰式の解釈(単位に注目)

回帰式:重量y(kg)=5.0+0.8×厚さx(mm)
(1) 厚さ0のときの重量
(2) 厚さが1mm増えると重量はどれだけ増えるか?

解答・解説:
(1) 厚さ0のとき y=5.0(切片=初期値)
(2) 1mm増で+0.8kg(傾き=増加率)

▶︎傾きの単位に注目。単位変換時にrは変わらないがbは変化する。


【問題5】残差の解釈

ある観測値で、
実測y=12.3、回帰式からの予測値ŷ=11.8。
残差eを求め、意味を説明せよ。

解答・解説:
e=実測-予測=12.3-11.8=+0.5

→ モデルは実際より0.5小さく予測している。
残差が正なら予測より実測が大きい

▶︎残差の並びに偏りがあれば「非線形」や「変動不均一」を疑う。


【問題6】予測区間と信頼区間(1級への橋渡し)

平均回帰線に基づく「信頼区間」と、個別データの「予測区間」の違いを説明せよ。

解答・解説:
信頼区間:母平均の範囲(誤差が小さい)
予測区間:個々の観測値の範囲(誤差が大きい)
→ 予測区間 > 信頼区間

▶︎1級では回帰式の推定誤差を「信頼区間」で評価する。


【問題7】外挿の危険性

回帰式:y=1.5+0.4x(x:10~50の範囲で測定)
x=100を代入して予測した結果がy=41となった。
この予測の信頼性をどう考えるか?

解答・解説:
データ範囲外(外挿)での予測は信頼できない。
→ 関係が非線形に変化している可能性。
回帰は“観測範囲内”で使うのが原則。


【問題8】決定係数が高いのに不良予測が外れる理由

回帰式のR²=0.95なのに、実際の不良発生を予測すると大きく外れた。
なぜか?

解答・解説:
・過去データに過度に適合(過学習)している
・新しい環境や条件で関係式が変化
・外れ値が影響

▶︎R²が高くても「汎化性(予測の再現力)」は別問題。
→ 1級では**交差検証(Cross Validation)**などが登場。


【問題9】標準化回帰式(β係数)

平均0・標準偏差1に標準化したxとyの関係が、
y*=0.85×x* で表された。
このとき、R²と解釈を述べよ。

解答・解説:
R²=(0.85)²=0.7225(72.3%)
→ yの変動の72%をxで説明できる。
標準化回帰の傾き=相関係数r。
単位の異なる変数を比較するとき有効。


【問題10】予測誤差の標準偏差(SEE)

回帰式からの予測誤差のばらつき(残差の標準偏差)を「標準誤差SEE」という。
次の残差があるとき、SEEを求めよ。
e:+0.3, -0.2, +0.1, -0.4, +0.2

解答・解説:
残差平均=0
平方和=0.3²+0.2²+0.1²+0.4²+0.2²=0.3
SEE=√(0.3÷(5-2))=√0.1=0.316

▶︎SEEが小さいほど予測精度が高い。
1級ではこれを使って信頼区間を計算する。


■この章のまとめ(サイト掲載用)

用語計算・意味ポイント
回帰式y=a+b×xa:切片(基準値)/b:傾き(変化率)
決定係数R²当てはまりの良さ(0~1)
残差e実測-予測モデルのズレ、偏りの検出
外挿範囲外の予測信頼性が低い(要注意)
SEE残差の標準偏差モデル精度の指標

💡 1級につながる視点

  • R²だけでなく「調整済R²(Adjusted R²)」を用いて多変量モデルを評価する
  • 回帰係数の有意性をt検定で判断(b/標準誤差)
  • モデル診断として残差プロット・正規確率プロット・分散均一性の確認
  • 実務では「予測できる範囲を明示する」のが品質保証の基本姿勢

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